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All About Biskero

about「エプロン」

25歳になる少し前、いろいろあってイタリアへ留学しました。1995年のころです。行き先はイタリア中部、トスカーナの古都シエナ。いくつかある選択肢からこの街を選んだのは、田舎ながら文化度が高そうだったから。ローマやミラノなどの大都市を選ばなかったのは、今でも正解だったと思っています。

当時住んでいたのは、国内外から集まった学生たちが暮らす学生アパートでした。3フロアあり、私の部屋は2階の2人部屋。最初のルームメイトは韓国から来たひとつ年下の男性でした。

そのアパートの主な住人は短期滞在の留学生たち。そのため入居者が次々と入れ替わっていましたが、私のいたフロアにはシエナ大学に通うイタリア人の若者3人が入居していたため比較的メンバーの面子は安定していました。概ね同世代の彼らとの共同生活はとても楽しく学びも多かったのですが驚くこともありました。そのひとつがファッションです。

なかでもアイロンのかかったシャツを常にタックインしている彼らの着こなしは、80年代後半からアメカジの洗礼をたっぷり浴びた身からすると随分新鮮でした。そうしたカルチャーもあったのでしょう、アパートには共同で使えるアイロンとアイロン台が備えられていました。彼らは洗濯し乾いた衣類(シャツだけではなくジーンズまでも!)を丁寧に、しかもかなり上手にアイロンかけしていました。現代の若者もそうなのか分かりませんが、普段からきちんとした服装をしてきたからこそドレスダウンがサマになるのか、と感心したものです。

というようなことを、BISKEROをオープンしてからお店のエプロンにアイロンをかけるようになって、ふと思い出しました。

BISKEROで使用しているエプロンは、お店のロゴを手がけてくれたタラコデザインのメンバーが、自らデザインを考え生地や型をセレクトしプロに依頼するというカタチでできあがったオリジナル品です。

以下、そのメンバーが教えてくれたオリジナルエプロン制作の背景をご紹介します。

コンセプトありきではなく、ヴィンテージの服の雰囲気の良さを活かして、zioさんに似合う、zioさんに着けて欲しいエプロンを、zioさんをスタイリングするつもりで作ったので、あまり深い背景はないです。

強いて言えば、NYの移民街などを舞台にした古いマフィア映画やチンピラ映画に出てくるお店の店員がしていそうなエプロンにしたいと思って、古着屋で昔のエプロンを探しました。最終的に195060年代のフランスのブッチャーエプロンをサンプリングしています。

長方形の2つの角を折りたたんだだけの形がBISKEROの四角いピザっぽいところは、偶然ですが気に入っているポイントです。

私の印象が「古いマフィア映画やチンピラ映画に出てくる店員…」なのかとちょっと肩を落としましたが(笑)、店名のBISKEROには「愛すべきろくでなし」という意味も込められているので、あながち間違っていませんよね。

ヴィンテージ風の型や素材の風合いといったところもとても気に入っていますし、何より自分のために作られたオリジナルに勝る愛着誘発装置はありませんから。これからもアイロンかけながら、大切に使い続けたいアイテムです。