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about 「コーヒー」

「残念だけど、やっぱり諦めよう」。それはBISKEROの開店準備もいよいよ佳境を迎えつつあった2023年4月のことでした。当初はドリンクメニューにエスプレッソコーヒーを入れるつもりでした。しかし、エスプレッソを淹れるためのマシーンの値段が高く、マシンの設置場所を確保するのも難しいということもあり、冒頭の決断を下さざるを得ませんでした。

その代替案として、普通のドリップコーヒーを提供することを急遽検討し始めたところ、ふと、とあるネット記事が目に留まりました。「元イタリアンの料理人が愛知県でコーヒー豆を焙煎し販売している…」といった感じの見出しだったと思います。高崎市、もしくは群馬県内のコーヒー関連ニュースなら分かります。でも、なぜ愛知県? オーナーのzio自身そういぶかしみながら、サムネイルをタップし、リンク先の記事へ飛びました。

記事は見出し通りの内容でした。しかし、読み進めながら鳥肌が立っていることに気がつきました。なぜなら、そこで紹介されている人物こそ、オーナーのzioがかつてイタリアのボローニャにある寿司店で一緒に働いていた人だったからです。

彼は当時(2001〜2002年頃)、料理の修業のためイタリア各地のレストランを渡り歩いており、その合間に情報収集や資金調達を兼ねて、ボローニャの寿司店で働いていました。彼の後に厨房メンバーに加わったzioは、お寿司どころか料理もろくにできなかったため、彼が教育係を務めてくれていました。

気が合ったのでしょうか。彼とは仕事以外の時間でも一緒に飲みに行ったり、ぶらぶら街を散歩したり、仲良く過ごしていた記憶があります。愛知特有のイントネーションで話す彼の口調を、よくからかったりしていました。その後、別の修業先へ移るため彼はボローニャを後にし、以降、20年以上も音信不通が続いていました。

その記事を見つけてしまったのは、きっと運命だったのだと思います。不思議な力に導かれるように、2023年5月、彼がお店を構える岐阜との県境に近い愛知県大口町へ向かいました。20年以上の空白の時間を越えるには、電話やメールでは心許なかったため、アポイントメントも取らずに直接会いに行きました。お店に入って「あの…覚えているかな…ボローニャで」と言ったあたりで、彼はすぐにzioのことを思い出してくれました。

話しが長くなりましたね。その日、BISKEROで提供するコーヒーに関して彼に一任したい(豆のセレクト、焙煎具合、ブレンドの配合等々)と伝え、彼も快諾してくれました。ですので、オーナーのzioはコーヒーに関して多くは語れません。その代わり、ここに書いたようなストーリーを伝えて、お客さんにコーヒーを味わってもらっています。

その効果かどうかわかりませんが(絶対に違うけど)、濃くて苦味があるのにすっきりした後味のアイスコーヒーは、多くのお客さんから好評をいただいています。ピザのお供に、いや、コーヒーだけでも結構ですので、ぜひ伊藤珈琲豆販売所のオリジナルブレンドをお試しください。

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