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about 「ピッツァ リピエーナ」

イタリア語の“ripiena(リピエーナ)”には、「(食べ物で)詰め物をした」という意味があります。英語に直すと“stuffed(詰めた)”や“filled with(満たした)”あたりが近いでしょうか。イタリアでは、お肉料理からパン、ケーキまで、何かしら詰め物の入った料理名には大抵“ripiena”という言葉が付きます。

ピザと言えば、生地の上にトマトソースやチーズなどさまざまな具材が乗っているのが一般的なイメージだと思いますが、実はピザにもリピエーナ仕様があるんです。といっても、ピザ生地に詰め物をして焼くのではなく、具を乗せない“pizza bianca(ピッツァ ビアンカ)”を上下半分に薄くスライスして、そこに具材を詰める(サンドする)スタイルとなります。

ローマの切り売りピザ(pizza al taglio)ではとてもポピュラーな存在で、特に薄くスライスしたモルタデッラ(もちろんピスタチオ入り)を何枚も挟んだ“mortazza(モルタッツァ)”は、リピエーナ系の代表メニューです。

ここまで読んで、イタリアのストリートフード界隈に詳しい方、もしくは世界中のフーディから注目されているフィレンツェの「All’Antico Vinaio」の活躍をご存じの方は、「スキアッチャータだって、生地を上下半分に切って具をサンドするじゃん」と思ったでしょう。たしかに、その通り。(写真は「All’Antico Vinaio」の定番商品でピリ辛ソースのポルケッタとナス、ルッコラをサンドしたLA INFERNO)

スキアッチャータは「押しつぶす」という意味のイタリア語で、フィレンツェを中心とするトスカーナ地方では、文字通り生地を押しつぶすように平たく成形して焼き、それを上下半分にスライスしてハムやチーズをサンドしたものが、パン屋さんからバール、スーパーのグロッサリーコーナーなどでもよく見かけます。(オーナーのzioが暮らしていたトスカーナの古都シエナでは、同じものが“ciaccino(チャッチーノ)”と呼ばれたりもします)

ピッツァ リピエーナとスキアッチャータは、発祥や歴史、方法論など、さまざまな観点で相違点があるようです。両方を食べ比べてみて、ピッツァ リピエーナのほうが生地のカリッと感が強く、スキアッチャータはややフォカッチャ寄りのフワッとした食感というのが個人的な感想です。しかし、どちらもイタリアのおいしい食材を気軽に楽しめるストリートフード。一口かぶりついたら小難しい定義なんてどうでもよくなってしまうものですよね。

BISKEROではローマの切り売りピザカルチャーをリスペクトしており、かつオーナーのzioがスキアッチャータ発祥のフィレンツェに近いシエナで暮らしていたということもあって、リピエーナ系のピザには強い思い入れがあります。モルタッツァは用意していませんが、普通のサンドイッチとは違う、カリッとサクッとした食感の生地とジュワッと口の中で広がる具材のハーモニーを、ぜひ一度お試しください。